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オカルト省公式ブログ

創作サークルMinistry of The Occultのお報せと雑談ブログ

 

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寄稿のお知らせ・サンプル掲載 

●最近の寄稿など

 ヒガヒサさん妖怪アンソロジーに、狩生とすみのめさんで小説作品を寄稿しました!
 ヒガヒサさんのアンソロジーはいつも個性的で、すんごい豪華で面白いので思い切って参加しときながら震えています でも楽しみです。 夏コミ発行予定とのことです!
 つづき以下に、本文と挿絵のサンプルがあります。
 なんかさっそく誤字等を見つけて崩れ落ちたりしました ああ申し訳ない

 以前サンプル公開しました唐橋さんの~すごくあたらしい歴史教科書~日本​史Cはイベントで一時間で売り切れという現象からの、現在はAmazonで大人気予約受付中となっております!!
 碁太平記白石噺ネタで狩生が小説を寄稿しております。よろしくお願いします。


拍手お返事等次回で…! 遅れて申し訳ないです (ノД`)
『花追う鬼』  文:狩生みくず 挿絵:すみのめ


1.鬼の風聞、恋の風聞

 京のみやこの、深い夜闇の片隅で、霙風を避け、凍てつく霜を避け、棄てられた館舎に膝を寄せ合い熱心に語らう者どもがいる。
 はたして、身形では貴賎を問わず集うたようだが、何者たちであったろうか。
「――それでは『みをつくし』、とはどうじゃ?」
「澪標(みをつくし)がどうした」
「身を尽くす、という意味にかかるのじゃよ」
「いかん、いかん、さんざ使われた手だわさ。そろそろ聞き飽きておる」
「だめか。われら、文などまるで慣れぬでのう」
「京のうたの流行(はやり)では、『逢坂の関』がよかろうぞ」
「ほう、流行か」
「うむ。貴公子の流行じゃというぞ」
「よかろ。よかろ」
「さらにはな、文を出したところでまず何度かは断られるのが通例ともいうぞ」
「はて、態と断るとは珍妙なことをするものじゃ」
「女子がの、身持ちの堅いふりをするのだとよ。色よい返事を出すのは後じゃ」
「面倒なならいであるのう、紛らわしい事よなあ」
「ゆめ、容易く諦めてはなりませぬぞ。白朮(うけら)殿――」




 今や梅の枝は蕾も見当たらず、灰色にかたく凍ったまま、長いつららを作っている。そんな吐息も白む寒さのきびしい夜更けの大路を、ひとりゆく影があった。
 年の頃は十五、六。少年の歳だが、上から二番目の姉の嫁入り先の融通で大内裏に就職口をつかんでいた。まだ見習いもいいところで、官位はまだない。
 一仕事を終えて帰路につく月や星を頼らざるをえないみやこの夜は暗く、手灯の光は頼りない。
「あれ……」
 がしゃり、と壺やなぐいで矢の鳴る音がする。武者でなければ、賊であろう。
 京の闇は深い。だから、こんなふうに二門ばかり先にあらわれた男の人相を探るのも、一苦労なのである。
「おう、そこに誰かあるか」
 やにわに現れる大男の影と、よく響く太い声に戦くところであっただろうが、少年は警戒をといてぱっと笑みを浮かべ、互いの顔が見えるところまで歩み寄った。よく見知った相手だという気がしたが、知人を騙る物の怪であるかもしれぬ。
 よくよく見れば、少年より二回りは年上だろうか。腕まくりした鎧直垂、豊かな鬚に荒武者然とした姿。男は、相手を視界に認めるとにいっと笑みを返してみせた。
 鬚面とはいえ、妙に人好きのする笑みである。
 武人の仲間がつかっていた呼び名を知るばかりで、身の上のことは何も知らないが、ともあれやはり思った通りの相手らしい。いつぞや、荒くれ者に絡まれていたときに偶然あらわれて、恫喝一声で追い払ってくれた武人だ。あの時の様子は恐ろしげであったが、平時は気さくで子供のように良く笑う男だった。風体が目立つものだから、見かけるたびに声をかけ、それなりに親しくなっていた。
「――ああ、驚いた。ナベさんですか!」
「おう。そなたは、図書寮(ふみのつかさ)の――」
「はい。図書寮の使部、日前十暁(ひのくまとおあきら)です」
 『ナベさん』と呼ばれた武者も、この闇の中であるから相手を確信するまで警戒があったのだろう。太刀から手をのけて、かわりに少年の薄い肩を叩いた。
「おうよ。そうじゃ、図書寮だったのう。――あそこの紙はよい紙じゃ。帝も使われるだけのことはある。先だっては、わしも随分と助かった」
「かまいませんよ、あんなふうに、厚さや色が違うだのと物言いがついた紙でよければ、いくらでも。下げ渡しの紙を売るわけにもいきませんし……」
 みやこの大内裏の中でもやや西に位置する、中務省管轄の図書寮。数ヶ月を経て日前も薄々気付いているが、あまりぱっとした部署ではない。重要な仕事は余所へ持って行かれ、本来の業務ではないはずの紙や硯の生産の方が中心になっている。
 まあ、あまり名誉も求めず、財は日々を暮らせるだけあればいいと思っている日前にとってあまり問題だとは思っていない――ただ、部署がつぶれたりしなきゃいいけど、とは思う。
「今夜も二条の知人のところへ、紙を届けに行った帰りなんです」
「こんな時分にか」
 治安がよいとはけっして言えない京の夜を、単身歩き回っている彼が不思議なのだろう。貧弱ではないが剣の腕が立つとも、剛胆そうにも見えない。実際に見た目のその通りである。
「他人に任せるのも、不安ですから」
「なるほど、感心だのう」
 ――何かあったとき、叱られるのは自分ですから。褒められることをむずがゆく思いながらも、そんな言葉は飲み込んでおいた。
 配属以来、いいように使い走りをさせられてはいるものの、父親という後ろ盾を持たず気の弱い母と出戻りの姉を抱えた身の上、仕事があるだけましなのだ。
 大内裏に仕えて以来、無理難題で夜道を走り回らされ百鬼夜行の目をかろうじて逃れることすでに三回。盗賊に行きあった時には、持ち金を差し出し拝み倒して見逃してもらった。彼には戦う度胸はないが、生き残るための妙な根性がある。
「わしは主の文を届けに行った帰りでのう」
「お疲れさまです」
「なんの。このところ、内裏に詰めっぱなしの殿の身にくらぶれば子供の使いよな」
 ――内裏に詰めっぱなし、というナベさんの言葉には日前にも思うところがあった。なんでも、昨今京のみやこのあちらこちらで鬼が人を食うだの攫うだのと、不吉な騒ぎが相次いでいる。
 官位を持たぬとはいえ、大内裏の一角・図書寮に勤めている日前には――右近衛府が職場の隣であったし――あきらかに内裏の警護があつくなっていく様子に気付いていた。武者衆が列をなし、陰陽師たちが調べものに走り回り、ひっきりなしに鳴弦やら、読経が聞こえてくる。
 ナベさんの主君もあの中にいるんだろう、どうやら仕える主人も武者のようだし。
「先刻わしが届けた文というのも、しばらく通いにゆけぬ殿からとある姫君への恋文でのう」
 こまめに文くらい書かないと仕事にかかりっきりのうちに、なじみの女の人に愛想尽かされるってこともやっぱりあるんだろうな……。
「ああ、邪魔をしたかな。――そなたもまた、この足で女子のもとへ通いにゆくのかもしれんしのう」
「そんな暇はないですよ、明日も早いですし」
 今はとても、女どころではない。若者の身でありながら即答した日前には、武者も複雑な笑みをこぼした。
「真面目よな、まだそなたには早いのかのう。――よし、働き者の日前殿よ。住処まで送ってやろう、わしがおるからには賊ばらも夜行も恐るるに足らぬぞ」

 

 やがて春。
 次に強風の日があれば、山桜もみんな落ちてしまうだろうか。――草花がすっかり陽気に目覚め、桜の散り時を気にしはじめる頃、大内裏の紙屋院で紙漉きの手伝いをしていた日前は、仲間の使部からとある噂を聞いた。
「おまえ、品部の手伝いまでしてんのか? 器用だな」
「人手がいるって言うから……」
「まぁ、いいけど――聞いたか。睦月ぐらいにさ、一条堀川で、鬼の腕を太刀で切り落とした男がおったとよ」
「鬼の? 噂を聞くけど、腕を切ったなんて初耳だ」
「だろう。なんでも摂津守に仕えてる武者だとかでさ――食うか、李(すもも)」
 会話の途中で小ぶりの果実投げてよこされ、水に濡れた手のまま日前はそれを受け取った。思わず周りを見たが、昼の鐘がなったばかりで品部の作業員たちは出払っている。
 明らかにサボりに来ている同僚を見とがめる者もいない――日前も、彼の近くの積み木に腰掛けて李をかじった。まだ色味も青く少し苦いが、爽やかに春を思わせる味がした。
「摂津守……聞いたことあるな、腕利きの家来は腕利きだってわけだ」
「まあ、結局、鬼が館にまで来て取りかえされちまったらしいけどよ」
「へえ。武者は無事だったのか、復讐に来たんだろう」
 なんとなく、ナベさんを思い出した。あの人なら恐がりもせず鬼の腕を斬れるかもしれない。そして、得意げに持ち帰ったものの、うっかり取りかえされて慌てる――なんていうことも大いにありそうな事に思えて、少し笑えた。そんなふうに考えると、ナベさんと重ねてその後の武者の身の上も気になるというものだ。
「まあ、死んでねえって話だな。あとは知らねえ。……あ、ちょっと俺は上西門から出かけてくるわ。日前、適当に言っといてくれ」
「無茶言うなって。仕事しろよ、気付かれてるぞ」
「いいよ別に。センパイ方だってやる気ねえもん」
 事実、華のある仕事は御書所あたりが持って行ってしまい、図書寮の内部はこういう製造所以外、活気がない。ぱっとしない部署、と言われる所以である。
 日前から見ても確かに出世はできないかもしれないけど、……まあいいや、食っていければ。――才がないわけでもないのに欲の薄い少年である。
「……ああ、あいつに相談してみればよかったのかな」
 あわただしく同僚が去ってしまってから、日前は自分が出世なんかよりも重要な問題を抱えていたことを思い出した。どうにも、自分には慣れぬことゆえ、誰か軽々しく他言しないような誰かに、話を聞いて貰いたいと思うのだが……。




「あら。十暁(とおあきら)、帰ってきてるなら言いなさいよ」
 先日、日前は珍しく明るいうちに帰れたと思うと、帰ったとたん姉に捕まった。
 裳裾を引きながら優雅とは呼べぬ足取りで寄り来る女人は、二十代も半ばほどの、なかなか美しい容姿をしていたが、かなり長身で良く言うなら健康的である。有り体に言うと、所作が荒々しい。
 名を、藤波という。
 彼の姉は二人あり、屋敷にいる姉は出戻った方の長女である――端的に言えば。詳しいところは家内の恥になるので、余り言いたくはないが、様子を眺めてもらえたならだいたい察せられるだろう。
「僕は今まさに帰ってきたところなんですけど……」
「文! 返すの手伝って。適当でいいから」
 今更だが、男に返す文を弟に書かせるという所行はどうかと思う。だいたい、筆跡で女手でないことなんかばれるものだし……そういうのも姉はどうでもいいんだろうけれど。
「それはいいですけど、姉上」
 扇で顔を隠すようなこともない、……どころか、堂々と館に君臨する女主人の姿に日前の支度を手伝っていた従者も慌ててどこかに行ってしまった。
「なによ」
「御簾、下がってないので。こっちの間まで出てくるのはやめたほうが」
「私の顔なんか、わざわざ昼に見に来る者はいないわよ」
 ――つまり、夜に見に来る者はいるのである。
「ねえ、十暁の知り合いに陰陽師か僧はいないの? ああ、陰陽師ならいるわよね、同じ部署だものね!」
「同じ中務省の管轄ではありますけど、違いますよ! わりと仕事場も離れてますし」
「そうなの」
「……いったいどうしたんですか。誰か呪うんですか」
 藤波は、弟を馬鹿にするような顔で溜息をついた。
「恨みを晴らすのに、そんなまどろっこしい手は使わないわよ。そのへんの貧弱な公達じゃあるまいし」
 ええ、姉上なら自分の手で絞め殺しますよね。
「気付いてないの? 私の部屋に通ってくる男どもがいるでしょ」
「いるでしょ、って無粋なのぞき見は別にしてませんけど」
 気にならなかったわけでは、ない。思いの外、姉が怒鳴るような騒がしい声はあまり聞こえてこないので、うまくいけばいいなあと小さな幸せを願っていた次第である。
「少しは姉の心配をしなさいよ。おかしいの、貴人らしい男がしばらく来ていたんだけど……」
「ああ、帰るところを見たことがあります」
「きっちり振ってやったら、次の日に武者が来たのよね」
「付き合ってなかったんですか」
「ないわよ。好みじゃないもの。……そう言ったらね、おかしいのよ」
 背の高い男が好みだと言えば、次の夜にやけに背丈のある男が訪ねてくる。
 太った男が好きだと言えば、次の夜にはでっぷりした男が口説きにやってくる。
 そんな調子で繰り返しだという。この尋常ではない様子に、姉もついに危機感を持ったらしい。
「最近、姉上がもてるようになったみたいだな、とは思っていましたけど……それは妙な話ですね」
「でしょう? ――そして、どいつもこいつも、歌が下手なのよ。すごく。どっかで聞いたようなのばっかり。わかりやすく口説いてくるんだけど、無理に歌にしなくていいのに……たぶん同じやつが化けてるんじゃないのかしら」
 そういえば、最近変化を書かされている文、全部違う相手――の、ふりをしている物の怪? ――から貰ったのだろうか? 確かに、似たり寄ったりの文面で、紙や香の選びも要領を得ぬようなありさまだった。
 中途半端に高価なものが使われているようだから、単に大らかなだけでそういう人なら姉とも合うのではないかと思ったものだが。
「だけど――通ってくる男相手に、随分と冷静な分析ですね。……痛ッ」
 桧扇が。そんな叩き方をしたら桧扇が壊れます、姉上。
「どうせ夢見る乙女の年じゃあないわよ。とにかく気持ち悪いじゃない? 前の男の嫌がらせかと思ったけど、あれ、たぶん物の怪よ」
「姉上にも怖いものがあったんだ」
「怖くはないわよ。物の怪なら物の怪って、はっきりしてほしいの」
「はあ」
 陰陽師まで呼び出そうとしながら、退治させるつもりではないのだろうか。
「察しが悪いわね。何かあったときに対処するとしても……相手が万が一、物の怪じゃなかったらどうするのよ。人間を、太刀で真っ二つにしたら咎められるじゃない!」



妖怪アンソロ挿絵サンプル





続きは夏コミ発行予定の本誌でどうぞ☆

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